独自評価法と実施例

先週までなんともなかったのですが、木曜日に急にパソコンのカメラが映らなくなりました。  しかたなく、その日のオンライン打ち合わせは声のみで。                  翌日の大事な打ち合わせまでには解決して事なきを得ましたが、組織内にいる時はSOSして助けてもらえたりできたものが今はトラブル対処も一人でしなければなりません。          フリーの厳しさですね。(バックアップや代替手段もきっちりしておかないと)

さて、前々回予告し、前回たどりつけなかった特許についての話です。

特許出願の明細書には、その発明が実施可能であることを示す、および発明の効果を実証するために「実施例」が記載されることがあります。                        機械・電気系のように構成や構造から実施可能性や効果が理解できる場合には、実施例は必ずしも必要ではありませんが、化学・バイオ・医薬系などでは分子構造や組成だけでは本当にそれが作製可能なのかわからないので、具体的な作り方を実施例に記載する必要があります。       また、その特性を類推することも困難なことが多いので、実施例でデータを示し、それに基づいて発明の効果を明らかにすることが必要です。                        そのデータは従来技術に対する優位性(効果の顕著性や異質性)を示す根拠になりますし、発明の進歩性を判断する際にも有利に働くことが多いので極めて重要です。

ここで、前回、例にあげた評価方法、すなわち研究開発の過程で独自に考案した方法を、特許出願の実施例における発明の効果実証に用いてもいいものでしょうか。

基本的に問題ありません。

研究者は基本的にまじめなので、成果を世に示す時にはより確実な方法、例えばISOやJISなどの規格に準拠した試験法によるデータを用いることを好みます。                  もちろん、学術論文などではそのほうが好ましいと思います。                また、カタログ等でその製品の優位性を示す場合には、業界標準の方法のほうが理解されやすい場合もあると思います。                                  ただ、特許出願においては必ずしも規格準拠方法や業界で確立された試験法である必要はありません。                                          発明の効果を具体的に示すことができるものであれば、独自に考案した評価方法を用いたものであっても大丈夫です。

実際に前回紹介した評価手法を実施例に用いた特許出願を行いましたが、いずれも審査段階でその点について問題になることはなく、成立しました。                    (なので、前回、紹介した実例は公知情報で、秘密情報の開示にはあたりません)

なお、再現性がある評価法であることも必須で、同業者が再現できるレベルの詳しさで実施例に記載することも必要ですし、特定の研究者でないと同じ結果が得られないような特殊なテクニックを必要とする方法ではダメですが、これは特許出願以前に研究開発の評価手法としてアウトですね。