評価装置は自作で

新型コロナの急速な感染拡大により、大阪府も「まん延等防止等重点措置」を国に要請したとのことですが、今日も大阪市内は結構な人出です。

オミクロン株は従来株よりも重症化リスクが低いらしい、との安心感(期待感?)もあるのかもしれません。

ウイルスの変異のベクトルが強感染力化&弱毒性化というのは遺伝子の生き残り戦略として間違っていないように思いますが、一直線にその方向に進むとは限りませんし、オミクロン株にも思いもよらない毒性が潜んでいる可能性もあるので、安心するのはまだまだのような気がします。

さて本題。

昔話ですが、私が新入社員として鐘紡に入って1年目ぐらいでしょうか、実験の合間に研究所のゴミ捨て場をウロウロしていました。・・・何をしていたのでしょう?

そこを通りかかった年配の研究者から、平井君も成長したね、とのお褒めの言葉をいただきました。・・・一体何を?

その当時、私がいた大阪の事業所には、私が所属する開発研究所(素材、主に高分子材料を扱う)とともに、生産技術研究所が同じ建物内にありました。

この生産技術研究所からは、私には何に使われるのかよくわからない機械部品、工作材料等の残骸がゴミとして出されていました。(今ほど、産廃の管理が徹底されていない時代です)

その中から、後々、使えそうなものを探し出してストックしておくのが習慣のようになっていました。

研究開発には、①既存商品の高機能化、②既存商品への新機能追加、③新規商品の創造、などがありますが、インパクトが大きく、より競争力が高い商品が得られるのは①よりも②、さらに③のケースです。

そしてそのような開発においては確立された評価手段がなかったり、既存の方法では良さを的確に表現しきれなかったりすることが多々あります。

けれども、評価手段がなければ開発は前には進めません。

となると、新たな評価手段をつくらないといけないのですが、試行錯誤になりがちで外注などしていられず、それなら自分たちで作ってしまおうということになります。

そのための材料として拾ってきた様々な部品を活用していました。(同僚のY君は私よりもずっとアイデアマンかつ手先が器用だったので、評価装置に留まらず、材料の試作装置も色々と作っていました)

ただ、ゼロから作るのは流石にハードルが高いので、既存の機器に組み込んで、通常では測れないような状況で測定する工夫をしていました。

例えば、

 特定の角度をつけて引っ張った場合の強度や破断・剥離状況

 高温の乾燥機中で荷重をかけた場合の状態変化

 炉の正面に一定の距離で試料を設置し、発火するまでの時間

などなど。

私の学生時代は有機合成が専門だったので、評価手段としてはNMR、IR、ガスクロ等の既存の機器を用いることが全てで、評価装置を自分で作るというのはかなり新鮮でした。

世の中にない新しいモノを創造するのであれば、その評価手段も新たに創る、という考え方は重要なのではないでしょうか。

逆に言えば、新たな評価手段が必要な開発こそ大きな成果に繋がる、ということだと思います。

次回、この話題を特許の話につなげてみたいと思います。